2012/01/10

2011.年間ベストアルバム40+10 [40位~21位]

1/10/2012
前回の続き。40位から21位まで。

40. Blackbird Blackbird / Summer Heart [Blackbird Blackbird / Plancha]

サンフランシスコを拠点とするチルウェーブ/ドリームポップ界隈の新鋭Mikey SandersによるBlackbird Blackbirdのデビュー作。
チルウェーブの夢見がちな所をひたすら突き詰めた様にふわふわ、ゆらゆら、ドリーミーで、まるで粉々に砕け散った鏡に乱反射する光の如くキラキラした音は、2ちゃんねるで「クリスタルゲイザー」と書かれてしまうのも納得。一見すぐ飽きそうな感じするけど、1曲が短くテンポがよいのでついつい聴いてしまう。なんでも最近はフルバンドセットでライブをやっているとの事で、見てみたらとても酷かったので来日はしないでいいです。
Blackbird Blackbird - PURE


39. Austra / Feel It Break [Domino]

Fucked UpやDeath In Vegas作品にも参加している才女、Katie Stelmanis率いるカナダのエレクトロ・ゴシック・ポップバンドAustraの1st。自らの声をシンセの様に操るポップな"Lose It"、ダークで妖艶な"Beat And The Pulse","Spellwork"を始めとする曲は独特の魅力があります。ちなみにKatieは同性愛者である事を公言しており、そこを踏まえてこのバンドを見ると、ドラマーもソレっぽいとか、MVもアレとか、ロマーヌ・ボーランジェみたいな顔したコーラス2人は趣味で採ってるんじゃないかとか、Katieの趣味性が全開(に見える)なところも外せないポイント。
Austra - Beat And The Pulse


38. Florence + The Machine / Ceremonials

世界を席巻するUK女性ボーカリストの1人、フローレンス・ウェルチ率いるFlorence + The Machineの2nd。80年代アイドル歌謡曲みたいなイントロで始まる"Breaking Down"やダークなダブステップ風の"Remain Nameless"(Deluxe盤のみ)といった変わり種はあるものの、基本的には得意とする壮大なゴス風オルタナティブ+ソウルを突き詰めた内容になっている。1stのヒットが重圧となってアルコールに依存していた生活を改め、禁酒して2ndを完成させたそうで、そんな彼女の人柄が伺える真面目な作品。まあちょっと重厚すぎる所はあるけど、1stより好みです。見た目は1stの頃の方が可愛いけど。

Florence + the Machine - What the Water Gave Me


37. Friendly Fires / Pala [XL Recordings]

UKの3人組、Friendly Firesの2ndはロック色が薄れて、よりディスコ、ハウス寄りに。1stの"Paris"の様なキラーが無いと言われつつも、蓋を開けてみればBlue Casette, Hurting, Pull Me Back To Earth, Chimesなどなど、曲はアルバムを通して粒が揃っているし、"Live Those Days Tonight"の熱さもたまらないし文句なし!
なんだけど、どこか普通になってしまった感じもする。よく聴いたし何だかんだ好きだけど、うーん…なんだろう。でもライブはよかったですよ!特にアンコールの"Kiss Of Life"のアレンジがレイブ感凄くて脳汁出た。まあ、このアルバムとは関係ないんですけども。
Friendly Fires - Hurting


36. Apparat / The Devil's Walk [Mute]

旧東ドイツ出身、ベルリン在住のSascha Ring aka Apparatの新作。前作『Walls』でもボーカルを多用し自らも歌ってましたが、本作はその路線を進めるだけに留まらず、エレクトロニックなんだけどアコースティックな質感も感じさせるインディーロック的なサウンドへと傾倒してます。まあ正直なところ、カラフルで刺激のあった『Walls』と比べると老衰しすぎなんじゃねえかって思わず心配してしまう様な音ではあるんだけど、音色の使い方なんかは相変わらずセンスを感じるし、そのスローテンポでどこまでもメランコリックな曲はシンプルで美しくて気持ち良く浸れます。
Apparat - Song Of Los


35. Neon Indian / Era Extraña [Mom & Pop / Static Tongues]

ブルックリン在住、Alan Palomoのシンセ・ポッププロジェクト、Neon Indianの2nd。本作はスタジオ収録になり、音色も多彩になっていたり、シューゲイザー色が強くなっていたり、世界観が憂いを帯びていたり…と勿論変わった所はあるんだけど、どこかおバカでポップなシンセサウンドは健在。セガに影響を受けているとか、DX版特典のアナログシンセPAL198Xの解説動画に見られる様な、彼のオタクっぽいユーモアなセンスがうまく活きてるんじゃないかなと。Toro Y MoiやWashed Outを始めとするチルウェーブな人達が色々と模索していた中で、Neon Indianは持ち味を活かして着実に進歩した事を示したと思う。

Neon Indian - Polish Girl


34. The Pains Of Being Pure At Heart / Belong [Slumberland]

ブルックリン発のインディーポップな4人組、The Pains Of Being Pure At Heartの2ndは1stの頃のシューゲイズ色が薄れ、音もハイファイになりました。正直このボーカルはあんまり好みじゃない。ライブ見てても貧相だし名前も切符だし。でもこのアルバム凄くかっこいい音出してる。「今回のアルバムでは、ギターからリヴァーブとディレイを剥ぎ取りたかった。そうすることでサウンドをドライにして緊迫感を与えたかったんだ。僕たちが10代の頃に聴いていたスマッシング・パンプキンズやニルヴァーナみたいにね」だそうで緊迫感があるかはともかく、彼らのポップで疾走感溢れる楽曲のよさがストレートに出ましたよね。
The Pains Of Being Pure At Heart - Belong


33. Little Dragon / Ritual Union [Peacefrog]

日本人とスウェディッシュ系アメリカ人のハーフで、いま最ももんぺと防空頭巾と竹ヤリが似合う女性、Yukimi Nagano擁するシンセ・ポップバンドLittle Dragonの3rd。R&Bやベース・ミュージックにも影響を受けてるモダンな感じのシンセポップなんだけど、音はスカスカだし、ユキミ・ナガノのゆる~い素敵ボーカルも相まってなんとも独特な雰囲気。"Precious"や"Nightlight","Summertearz"のチープで実験的な音も面白いんだけど、僕はキャッチーな"Ritual Union"や"Shuffle A Dream"に惹かれました。アルバム未収録の"Seconds(Syd The Kid Remix)"もお薦め。
Little Dragon - Shuffle A Dream


32. Adele / Adele Live at the Royal Albert Hall [XL Recordings]

1500万枚娘、アデルのライブ盤。"Someone Like You"と"Rolling in the Deep"くらいしか聴いた事なかったんですけど、人にいいと言われるとなんだか無性に聴きたくなるもので、でも今更『21』買うのも癪だって事でこのDVD付きライブ盤を買ってみたら普通によかった。曲もいいんですけど、なんと言ってもこの人は声がよいですね。たまにこぶし入る所とかドナルドダックみたいな笑い声もたまりません。DVDについてはライブ中とにかくよく喋るので、字幕付きの日本版買ったほうが楽しめるかも。印税要求したりしないから結婚してください。
Adele - Set Fire To The Rain


31. Rustie / Glass Swords [Warp]

Hudson Mohawkeに続くグラスゴーの新鋭ビートメイカー、Rustieの1stフルアルバム。フュージョンみたいな派手なシンセが特徴的で、ゲームミュージック的と言ってもいいかもしれない。"Ultra Thizz"に代表されるその熱狂的でレイブ志向なサウンドは一見頭の悪そうな感じはするんだけど下世話になりすぎず、一歩間違うと物凄くダサくなってしまいそうな所を格好よく仕上げている所にセンスを感じる。なんか酷い事言ってる気がしなくもないですが、42分という丁度良い長さでテンポがよい所も含めて気に入っています。


Rustie - Ultra Thizz (taken from Glass Swords) by Rustie


30. Metronomy / The English Riviera [Because]

UKのヘンテコ・エレクトロ・ポップバンド、Metronomyの3作目。同じ事はやらないという言葉通り『Nights Out』の強烈なヘロヘロエレクトロから一転、割りと普通なエレクトロ・ポップになって誰でも聴きやすい作品になりました。本作のコンセプトは地元イギリス南部の海岸地帯を「まるで70年代のアメリカ西海岸のようなユース・カルチャーの発信地だと勝手に空想してみたファンタジー」だそうで、言わば虚構の世界が描かれている。アルバムカバーも余白が額縁を思わせるし、椰子の木も1本だけ…と、前作から随分変わったけれど、どこか寂しげな雰囲気は継承されていて楽曲に深みを与えている。
Metronomy - The Bay


29. I Break Horses / Hearts [Bella Union]

ニューゲイズ勢渦巻くスウェーデンより、エレクトロニック・シューゲイズな男女デュオ、I Break Horsesのデビュー作。タイトルにある様に"心臓"の鼓動を思わせるリズム音が入っていたり、#5."Pulse"ではメンバーのMaria Linden自身の心臓の動悸に関する不安みたいなものが曲に反映されているのだとか。なんだかYouth Lagoonみたいなエピソードで暗い感じしますけど、Mariaの作る曲はダークで黄昏ていながらも下を向いてはいなくって、優しく包み込んでくれる様な幻想的な雰囲気が心地よい。僕は勝手にオーロラゲイズと呼んでますが、スウェーデンにオーロラが出るかどうかは知りません。

I Break Horses - Hearts


28. The Sunshine Factory / Sugar [Saint Marie / BFW]

アラバマの男女3人組シューゲイザー、The Sunshine Factoryの2nd。Bandcamp漁ってて見つけた掘り出し物。シューゲイズオリジネイターの影響だけでなく"Twisted and Clover"に見られる様にUKロック色が強いのも特徴で、メロディアスな楽曲はクォリティ高いです。このアルバム自体は曲間に意味不明なシンセが入っていたり変な所もあるんだけど、今年のシューゲイザーではなんだかんだ一番気に入っててよく聴きました。本作はSaint Marie RecordsからCDがリリースされてますが、ネットレーベルBFWのサイトではデジタル盤がフリーで公開されているので、シューゲ好きな方は是非どーぞ。
The Sunshine Factory - Sugar Cane


27. Clams Casino / Instrumental Mixtape [Self-Released]

ニュージャージーで理学療法の勉強をしているという、Clams CasinoことMike Volpeの1stミックステープ。この作品はなんでも「ベースド・ミュージック」の代表作との事で、未知の言葉に胸を膨らませて聴いてみると…エレクトロニカじゃねーか!そりゃビートは鮮烈で今時の音だけど、新しい言葉にビビって損したよまったく。まあ違いの判る人には判るのかもしれないけれど、例え本作が新しい何かに聴こえなくともそのクォリティはとても高い。そこに価値があるのであって、無理に新しいジャンル提唱しないでもいいと思うんですけどね。だいぶ脱線しましたが本作はフリーDLなので未聴の方は是非どうぞ。

Clams Casino - Real Shit From A Real Nigga


26. Yuck / Yuck [Fat Possum]

元Cajun Dance Partyの2人を中心に結成されたロンドンを拠点とするオルタナティブ・ロックバンドYuckの1st。この轟音とポップさはなんだかDinosaur Jr.辺りを彷彿とさせるし、激しく90年代。でも新しさなんか無くったっていいんですよ。"Get Away"も"Shook Down"も格好いいし、広島出身のマリコちゃん(Bass)とのツインボーカルがキャッチーすぎる"Georgia"はナイスシューゲイザーで最高だし、あのケイジャンのガキ2人(DanielとMax)が、こんなに格好いいバンド引っ提げて帰ってきた事に胸が熱くなります。いや別にケイジャン好きじゃなかったけどさ、なんというか、ホクトベガがダートで復活した時みたいな喜びがありますよね。



25. tUnE-yArDs / W H O K I L L [4AD]

tUnE-yArDsことMerrill Garbusの2nd。はじめて彼女を見たのは"Bizness"のライブ映像で、自らの声をサンプリングしたコーラスのループとアフリカンビート風の楽しげなリズム、そこに彼女のウクレレと力強い歌声にシンプルで格好いいベースラインが載って、やがて絶妙なタイミングでサックスが加わると、なんかよく判んないけど凄いの見た!と興奮しました。なんというか彼女の音楽には根源的な力があって、抗いようのない魅力を感じる。本来ならベスト20に入れたい所だけど、このアルバムはライブでの力強さが抑えられている様で、ライブ映像ばっか見ててCDはあまり聴いてないっていうアレです。

tUnE-yArDs - Bizness


24. John Maus / We Must Become the Pitiless Censors of Ourselves [Ribbon Music / Up Set The Rhythm]

大学で音楽を学び、Ariel Pinkに出会いポップに目覚め、現在はハワイ大学で政治哲学の博士課程を専攻中という風変わりなシンセポップアーティスト、John Mausの新作。のっけからグラディウスみたいな物凄いチープなシンセ音で失笑してしまうんですけども、通しで32分というテンポの良さも手伝って、何度も聴いているうちに癖になってくる。
ライブではシンセもPCも何も使わず、マイク1本で熱狂的に歌っているので「The Nightmare Karaoke」などと書かれてしまう始末ですが、そんなまじめにバカやってるのか、何処までもまじめなのかよく判らない胡散くささもよいです。
John Maus - Believer


23. Peaking Lights / 936 [Not Not Fun]

ウィスコンシンのダブ・サイケポップな夫婦デュオ、Peaking Lightsの2nd。この深く気怠いながらも陽気な雰囲気はなんなんでしょうかね。"All the Sun That Shines"や"Amazing and Wonderful"を聴いていると、強烈な甘い匂いと煙が充満した見世物小屋で、ゴキゲンに鍵盤を弾き延々と歌い続ける怪しい男女を見てしまった気分にもなるが、一見ラリっている風に見えて実は覚醒していて、大真面目にこういう病的な曲を作っている様な感じもする。まあこんな曲ばかりだったら困ってしまうけれど"Tiger Eyes (Laid Back)"なんかはWarpaintにも通じるドリーミーな美しいサイケポップで、どうやらただの病的な夫婦ではなさそうです。
Peaking Lights - Hey Sparrow


22. Tiger & Woods / Wiki & Leaks [Self-Released]

某ゴルファーを思わせるアレな名前と、ナイスなディスコサウンドで話題の2人組Tiger & Woodsのフリー作。洗練された『Through The Green』とは違って、パンの移動が鬱陶しすぎる曲やら、終わりに30秒無音が入ったまんまの曲やら、制作途中で投げてHDDに入れっぱなしだった様なファイルもあったり如何にもな実験作ではあるんだけど、そんな闇鍋的アバウトさも含めて楽しい気分になれる作品。本作のダウンロードはコチラからどうぞ。にしてもWiki & Leaksてふざけた名前だ。


T&W Lab File #11 by As You Like It


21. M83 / Hurry Up, We're Dreaming [Naive]

Anthony Gonzalezによるフレンチエレクトロ・ポップ、M83の6枚目となるアルバム。M83というと過去作の"Couleurs"や"Unrecorded"といったインストの名曲とか、アルバムラストで恒例となっていた10分を超えるアンビエント長編が思い浮かぶんだけど、今回はそういうお約束やらなんやらを打ち破りたかったのか、いつになくエモーショナルなボーカルに、アルバム通してアップリフティングな曲を揃えてきたりと意欲的な作品。まあ過去作はちょっと退屈な側面があったのでこういう姿勢は評価したいけど、やっぱり全22曲80分は長いし、最初の2曲(Intro, Midnight City)が抜けている事もあって、ちょっとメリハリに欠ける所はありますね。次回作はどうなるんだろう。

M83 - Midnight City



 
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