ピザと一緒に注文出来るテイラー・スウィフトの話題盤。聴く前は年間ベスト候補だったんですけど、この作品は前作にあった"Spaks Fly"や"Better Than Revenge"みたいなコテコテのスタジアム・ロックな曲が無い所に物足りなさを感じて結局この位置に。とはいえダンス・ミュージック調な曲を取り入れたこと自体はティーンに絶大な支持を受ける彼女にとっては必然とも思えるし、邦題『私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない』は耳に残るナイスポップで気に入っている。他にもギャリー・ライトボディやエド・シーランとのデュエットなどもあってなんだかんだ楽しめました。ところで、テイラー嬢の"運命の人"探しと称した歌ネタ探しはいつまで続くのでしょーか。
Digital Mystikzの片割れでDeep Mediを主宰するMalaさんが、年がら年中激押しや太鼓判を押してばかりな気がするGilles Petersonの手によって、キューバの首都ハバナへと送り込まれ制作したというダブステップmeetsキューバ音楽な作品。ドラゴン村上の映画『KYOKO』(KYOKONではない)も見ていないしキューバ音楽というものを聴いたことがないので、いまいちピンと来ないところもあるんですけれども、"Tribal", "The Tunnel", "Ghost", "Celle F"なんかはかっこ良くて気に入っている。まあちょっと綺麗にまとめようとしすぎている様な印象があって、そこに若干の物足りなさは感じるんですけど、それでもやはりよい作品だと思います。
ダブステップ世代のUKシンガーソングライター、Delilah(デライラ)ことPaloma Ayana Stoeckerさん23歳のデビューアルバム。LVなどを共同プロデューサーに迎えて制作された本作は、トリップ・ホップを思わせるアンビエント・ソウル的な仕上がりで、彼女の主張してくる歌声も含めてなかなかの良盤でした。中でもミニー・リパートンのカバーは出色でしょう。今年もジェシー・ウェア、ラナ・デル・レイ、ティナーシェイなど魅力的な女性シンガーの登場に心が踊ったけれど、もっともライブ映えするのはこの人なんじゃないかなあ…という気がする。事前に出たEP『2-4am』はフリーDLなので是非どーぞ。
Hotflushで4つ打ちをやっている変わり種、Sighaのデビューアルバム。まず日本人としましては、ジャケットのおっぱい、ではなく最終トラックの"Aokigahara"に目を奪われる。なぜ青木ケ原樹海を題材にしようとしたのか…。まあそれは置いといて、基本的にはダークで硬質なテクノなのですが、合間に入るドローンやアンビエントトラックがよいアクセントになっており、"Suspention"からの"Dressing for Pleasure (Ideal)"への流れは至福の瞬間です。自然と繋がっている構成も相まってなかなか中毒度が高い。HotflushのYoutubeチャンネルで全曲試聴可。
スウェーデンのソダーバーグ姉妹によるカントリー/フォーク・デュオ、First Aid Kitの2ndアルバム。Klalaの素直な歌声は凛とした強さを感じさせ、それを支えるビジュアル担当のお姉さんJohannaのコーラスも魅力的です。お父さんがプロデュースした前作はいくつかいい曲は有ったものの、正直言って平凡だったのですが、本作は深みを増したプロダクションに、分かりやすいポップさを兼ね備えた素晴らしい出来で本当によく聴きました。しかしあの幼かった2人がこんなに成長するとは…。私は、もう、駄目かもしれない…。
今年は一体何作のミックステープをリリースしたのやら…な、世界一多作なラッパー、Lil B "The Based God"のMishkaから出たベスト盤5部作のその2。まあベストってどうなのか…とは思わなくもないのだけど、この人、じゃなくて神さまくらい多作大作駄作で混沌としていると、こういう企画はとてもありがたいのです。今年のミックステープでは『God's Father』がよかったんですが、2時間もあるのでコンパクトにまとまった本作をより愛聴しました。Clams Casinoプロデュースの"I'm God"、堂々と某豪華客船のアレを使用している"3 Stacks"など聴き応えあり。フリーDL。
ホントはトップ5とかに入れてナウいフリしたいAndy Stottの最新作。話題のOPトラック"Numb"はターチターチとMr. Terchの名前を連呼していてヘッドホンスレ住人としては歓喜なんですが、オペラ調のボーカルが支配する"Lost and Found"といい、なんだか格調高くて凄いなとは思うものの、最初の2曲はいまいち良さが判らず。でも3曲目のSleepless以降はとても気に入っていて、中でも表題曲"Luxury Problems"と"Leaving"に関しては昨年の『Passed Me By/We Stay Together』とは異なる素晴らしさを感じました。ちなみに、Andyさんは本作のシーンを超越した成功でようやく音楽一本で生活していく事が出来る様になったのだとか。
Andy Stott - Leaving
30. Dean Blunt and Inga Copeland / Black Is Beautiful [Hyperdub]
かつてHype Williamsを名乗っていた怪しい男女2人組、Dean Blunt and Inga Copelandの1stフルレングス。ジャケットからして意味不明なのですが、音の方は更に訳がわからなく、煙たいとかスモーキーなどと形容される彼らに煙に巻かれている気分になる。歌ものに関してはInga Copelandの可愛らしい声の魅力もあってすんなり聴けるものの、インストものはさっぱり理解出来ず「なんだこれ」と繰り返しているうちに癖になってきます。訳はわからなくともキャッチーなので気分よくなれる作品だけど、あんまり聴いているところを人に見られたくはないかなあ…。
Dean Blunt and Inga Copeland - 9
29. Chairlift / Something [Columbia / Young Turks]
ブルックリンの男女デュオ、Chairliftの4年ぶりとなった2nd。前作はipod nanoのCMに採用された"Bruises"が話題でしたが、今作では"I Belong in Your Arms"の日本語版(これの為にわざわざMVまで作るとは…)が、文系美女キャロライン・ポラチェック嬢の腋毛効果も相まって話題となりました。なんだか話がワキに逸れた気もしますが、プロデューサーにDan CareyとAlan Moulderを迎えただけの事はあって前作より遥かに洗練されているし、キャロラインのボーカルも表現力が増して(ライブではアレだけど…)明瞭快活なシンセ・ポップに仕上がっている。上半期によく聴いた1枚です。
Left BlankなどからシングルをリリースしていたVesselの1stフルアルバム。いままで聴きにくい作風の人だなあ…と思ってたんですが、Tri Angleらしいボーカルサンプルやウィッチハウス風味が効いたのか、これまでの作品より大分キャッチーなのですんなり入れます。唐突に入るノイズや意味不明なシンセが荒唐無稽なところを見せてはいるものの、"Silten"から"Lache"の流れは素晴らしく、本作のハイライトでしょう。終盤のゴスな空間に軽妙なシンセベースが踊る"Court of Lions"もよいし、難解なところはなく単純にかっこいい作品です。…すくなくとも聴いている間は。不思議なことに聴き終えた後で印象に残らないんですよね。これが無ければベスト10入れてたかも。
ベルリンのレコードショップHard Waxで働くOstgut Ton一派、Rene PawlowitzによるShed名義の3rdアルバム。妙に圧迫感のあるジャケットですが、前半はこのイメージまんまで、地を震わせる強烈な低音にうっすらと流麗なシンセが被せられた"Silent Witness", "I Come by Night", "Day After"は迫力がある。これが中盤の"Phototype"辺りからうっすらしていたSHEDの文字がくっきりしてくるかの様に、ウワモノのシンセが存在感を増して、低音は徐々に後退していき、最終トラック"Follow the Leader"では夜明けを感じさせる美麗なピアノのメロディーに支配されます。パーティでの一夜を体験させる様なアルバム構成と、レイブ的な音をふんだんに使った本作はキラートラック満載で素晴らしいのだけど、個人的にはそこまでハマらなかったかな。