2013/09/13

Selena Gomez /『Stars Dance』に見る意外なアイドルの影、そして…

9/13/2013
Artist : Selena Gomez
Title : Stars Dance
Label : Hollywood
Release Date : 2013/07/19
Format : CD
Amazon(CD)



作品自体が Auto-Tuneステマ、といった揶揄(主に私の)をものともせず、Selena Gomezの新作が好調だ。遂にBillboard200の1位を獲得した他、既に6週チャートイン中。各国のチャートでも軒並み上位に名を連ねるなど、過去最高のヒット作となる事は間違いないなさそうだ。まあこのアルバムは身も蓋もない言い方をしてしまうと、色々あった彼女も21歳になった事だし、ここらで子供っぽいバンド形態(Selena Gomez & The Scene)なんかは卒業して、心機一転大人路線で売り出すわよ!…といった性格のもので、やってる事はというと、リアーナ辺りを参照した紋切り型のEDM路線ダンス・ポップなのだけど(私は大好きですが)。

ビルボード1位の貫禄漂うゴメス「見ろ、二位以下がゴミの様だ…」

Stargateプロデュースのヒット・シングル"Come & Get It"なんかはもろリアーナであるし、他にも"Write Your Name"のシンセはなんかBathsっぽいなとか、ボーナス・トラックの"Nobody Does It Like You"はウィスパー・ラップも含めCharli XCXを思わせるところもあり、聴く人が聴けばもっと色々な参照点が垣間見えるであろう楽しい作品なのだが、この作品の魅力について書きだすとキリが無いのでここでは置いておこう。

問題は通常版の最終トラック(11曲目)、"Love Will Remember"である。冒頭にジャスティン・ビーバーの「やあ僕だよ。アイアイアイアイ愛してるって、君にそう伝えたくて電話したんだ。(中略)君は僕の一生の想い人なんだ…」といった歯が浮く内容のボイスメール(本物らしい。私の持ってる盤ではカットされてる!)をサンプリングしている事で話題となった曲であるが、意外なことに、この曲が参照しているのは、いまや人々の記憶から消えつつあるレベッカ・ブラックが昨年11月に発表した最新シングル”In Your Words”だ。

Selena Gomez / Love Will Remember

Rebecca Black / In Your Words

ピアノを基調としたしっとり切ないバラードで、両曲とも別れの歌である。アレンジの方向性の違いはあるものの、よく似ているし、サビなどはそのまま入れ替え可能なくらいで「ラブウィルリメンバー、ラブウィルリメンバー、ラブウィルリメンバーアーアー、リヴィンインユアワーズ…」といった具合である(どんな具合だ)。今をときめくセレーナ・ゴメスが、今や落ち目のレベッカ・ブラックを参照するとは一体何故なのだろうか。実に不可解極まりないのだが、可能性はいくつか考えることが出来そうだ。

可能性その1. 制作者が同じ
ありそうな話ではあるものの、残念なことにレベッカ・ブラックの"In Your Words"は制作者非公開の様だ。一方、ゴメスの"Love Will Remember"はロック・マフィアがプロデュースしており、売れっ子の彼らが落ち目のレベッカ・ブラックをプロデュースというのはちょっと考えにくいかもしれない。ちなみに、『Stars Dance』の制作期間は昨年10月から今年3月にかけて行われており、時系列的には参照が可能だ。

可能性その2. 偶然似ただけ
結論として面白くないから却下。

可能性その3. そもそも似てない
却下。

可能性その4. ジャスティン・ビーバーへの思い
"Love Will Remember"にはこんな一節がある「あなたにはなんにもなくて、二人で笑ってただけの時もあったよね…どうしてこうなってしまったの?」。純粋だった過去への憧憬を歌っている訳だが、実はジャスティンは15歳の頃からセレーナのファンであったことを公言しており、16歳で念願叶って交際を始めたという経緯がある。そして、レベッカ・ブラックが"In Your Words"を発表したのも同じく15歳(『Stars Dance』リリース時には16歳になっている)の時なのである。奇しくもジャスティンと同じYoutubeアイドルであるレベッカ・ブラックの現在の姿にジャスティンと自らの過去を重ねることで、よりジャスティンとの思い出を美しく振り返ることが出来る…そう考えたのかもしれない。イイハナシダナー…と思ったら、最近またもやジャスティンとヨリを戻しつつあるなんて噂も。お騒がせ商法はもういいですよう…リアーナの真似は曲だけにして頂けませんか。

可能性その5. オートチューン女王のプライド
天才は天才を知る。というが、レベッカ・ブラックはレディ・ガガをして「彼女は天才よ。私はまだ聞いてないけど。」と言わしめた存在である。徐々に過剰なエフェクトを廃し、ナチュラルな歌声を披露してきているものの、世界中に彼女の名を知らしめたデビュー曲"Friday"は、強烈なAuto-Tune使いが話題になった事を忘れてはならない。こうなると「オートチューン界のクイーンはワタシ、ワタシなのよ…!」とブラックの潜在能力を恐れたゴメスが、今のうちにブラックを叩き潰す目的で曲を拝借した…という事も考えられるのではないだろうか?何と言ってもYoutubeで通算2億再生を超える"Friday"(一度削除した為、現在は5700万再生だが削除前は1億6千万を超えていた)に対し、"In Your Words"はたったの200万再生に過ぎない。"Come & Get It"が1億2千万再生を超えるなど今や絶大な人気を誇るゴメスが多少参照したところで、問題にはならないという訳だ。(き、汚い…汚いぞセレーナ!)


…と、いろいろと考えては見たものの、どれもイマイチしっくりこないというのが本当のところだ。個人的には可能性4であって欲しいが、果たして本当の理由は一体なんなのか。単に良さそうな曲だからといって、比較するのも可哀想なくらい落ち目のレベッカ・ブラックから、セレブであるセレーナ・ゴメスが曲を拝借した、というのでは余りにも救えない話じゃないか。ここは一旦目線を変えて、最近のレベッカ・ブラックの活動に目を向けてみる事にしよう。

Stay - Rihanna - (Cover) by Rebecca Black & Dave Days

Miley Cyrus - We Can't Stop (Rebecca Black & Jon D Acoustic Cover)

なんと、レベッカ・ブラックはカバー活動に走っていた…!(新曲を作る資金が尽きたのだろうか…) しかも、よりによってこの2人とは。マイリー・サイラスと言えば、セレーナ本人はもちろん、親友のテイラー・スウィフトとも不仲説が囁かれるセレーナと同じディズニー出身アイドルで、最大のライバルと言える存在である。挙句にリアーナのカバーなんかした日には、ユニセフ親善大使も務める所謂"いい子"のセレーナも自分のことは棚にあげて「私の後釜でも狙うつもり!?」と立腹しても不思議ではない。なんとなく、だいぶ核心に近づいた気がする。ところで、このデュエット相手のDave DaysやらJon Dって誰?

彼らはレベッカ・ブラック同様に、Youtubeを舞台に活動するミュージシャンで、主に有名曲のカバーで人気の存在だ。身近な例で例えると、ニコニコ動画の”人気歌い手"といったところだろうか。しかし、この誰だかわからない連中とつるんで歌う、という光景は何かを思い起こさせないだろうか?そう、解散した"ザ・シーン"である。元々「お飾り」とか「居ても居なくても一緒」などと散々な事を言われてきたセレーナのバックバンドであるが、思い返してみると、今作『Stars Dance』は必要以上にセレーナ・ゴメスの”ソロ・デビュー作”という謳い文句を強調していた印象がある。「居ても居なくても一緒」というザ・シーンの存在感の無さからすれば、今更ソロ・デビューを売りにする必要はない筈にも関わらず、である。何故か?

ソロ=単独、一人。ソロを強調する事は、暗にジャスティンとの決別を示唆してもいた。これを裏付ける様に、セレーナはアルバムリリースと前後して「私はシングルよ」といった発言を度々している。つまるところ、ザ・シーンの解散もシングル発言の一種であり、セレーナのスキャンダル商法のダシに使われただけなのかもしれない。自身のプロモーション戦略とはいえ、長年のパートナーであったザ・シーンの解散にセレーナは心を痛めたであろうことは想像に難くない。そんなところへ誰だかよくわからない連中と歌うレベッカ・ブラックの姿を見たら、羨望と同時にザ・シーンへの謝罪の気持ちがセレーナの心に産まれたとしても不思議ではないのではなかろうか。ここで、もう一度"Love Will Remember"の歌詞を見てみよう。

「The trips we dreamed takin」
このtripは、ライブツアーを示唆していると解釈する事も可能だ。

「When all you had was nothing」
何も持ってないというが、2人の出会いは2010年で、既にジャスティンは『My World』がプラチナ・ディスクを獲得するなど相当なスターだった筈である。何も持っていないのは、どこの馬の骨とも分からぬザ・シーンにこそ相応しい表現と言えるのではないだろうか?

やはり、"Love Will Remember"にはジャスティンとの思い出と同時に、ザ・シーンへの秘めた思いが込められていたのだ…!こう考えると、よくわからない連中とコラボしているレベッカ・ブラックの曲を参照したのは必然だった、そう言えるのではないだろうか。まったく、ここまで思ってるなら何で解散しちゃったんだようもう…!とやきもきしてしまう所であるが、曲中セレーナは「どこかで永遠に、私達はまた踊るの」と歌っており、ザ・シーン復活を暗に示唆している。意外と次回作では、ひょっこりセレーナ・ゴメス&ザ・シーン名義で戻ってくるかもしれない。我々は待とうではないか、彼らが帰ってくるそのときを…!

…と勢いで書いてはみたものの、レベッカのデュエット動画はいずれも今年の4月以降に公開されたものみたい。4月と言えばもうレコーディング期間も終わっており、あっさり自説を覆されてしまった。…え、じゃあ何なの?まさかただのパ○リ…?なにそれこわい。


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