Artist : NX1
Title : MR (MRECLTD15)
Label : M_Rec LTD (ITA)
Release Date : 2013/01/14
Format : Vinyl
Amazon(MP3)
先日、スーパーであるカップルの会話が聴こえてきた。「このマーガリン何か違うのかな?」「ああ、それはね、油が違うから脂肪分が…」。これを聞いた瞬間、なーにが「ああ、それはね」だ、そんなパッケージにでかでかと書いてある事ウンチクってんじゃねえええばーかばーか!と思わず心の中で毒づいてしまったのだが、何気なく男の顔を見た私は戦慄した。その男は心の底からウンザリした様子をしており、その顔にはこう書いてあるのだ。”どうでもいいだろこのクソアマ、ペガサス流星拳!!”(おかしいと思うかもしれないが私には見えたのだ。)じゃあ女の方はどうなのか、というと、こちらの方よりが深刻で、彼女の顔には表情が皆無なのだ、というより表情という概念そのものが消え失せたかの様である。まさに永久凍土の様相、その凍てついた鉄の仮面は4000℃の高熱を発する核弾頭でも溶かす事は出来ないに違いない。彼らに何があったのかは知るよしもないが、一見他愛ない会話をしている様に装いつつも、心の中では血で血を洗う千日戦争(ワンサウザンドウォーズ)を繰り広げているとは、なんという冷戦カップル…!と、怯える私の脳内で唐突に鳴りだしたのが本作、バルセロナのテクノデュオNX1による『MR』のオープニングトラック”MR1”である。
この人達もSemanticaなんかからもリリースしているとおり、ニュースクール・ミニマルとか言われてる様ですが、やってるのはフロア向けの直球テクノで、出すシングルどれもいいという注目のニューカマーみたい。という訳で聴いてみると、重たいキックによるうねりと、畳み掛ける様なハット、パルス音が作り出す疾走感あるグルーヴは何処かパーカッシブな感触もあり非常にかっこいい”MR1”、同系統の”MR3”、地を這う様な迫力ある音響効果がディープなアトモスフィアを形成している”MR4”もよいんですが、私は中盤から幽玄なシンセが加わる柔らかみを持った”MR2”が一番好みですかね。これがある事でよりハードな他のトラックが引き立っている様に思えるし、ベタな展開ながら単純にかっこよいトラックです。言うなれば油の違うマーガリンと言ったところで、きっとあのカップルにもこういう潤滑油が必要なんじゃなかろうか。ってどうでもいいですね。なんとなくフザけた事ばかり書いてしまったけれど、他の作品も買う気にさせる傑作です。ちなみに本作のタイトル『MR』とは、マーガリンの略…ではなくM_RECレーベルのこと。